史上最大の下剋上

ゴールデンウイークも間もなく終わろうとしています。
私の事務所は暦通りの休みでした。
以前は3月決算の業務等で休日も仕事していたものですが結婚して子供ができると普段子供の相手は妻に任せっ切りなだけに仕事一辺倒という訳にもいかなくなりまして無理をしてでも休日は休むようになりました。
という訳で十分に休息は取れたと思いますが、明日以降どれだけ効率的に仕事を進められるかが非常に気になる所です・・・。
という訳で以前からまとめる時間がなくて放置していたネタをようやく掲載することができるようになりました。プロ野球に関する話題です。
(しかしこの講演会が開催された時にはまさかあんな大地震が起きてその影響がプロ野球にも広がるとは(まあ当たり前ですが)想像もしていませんでした)
去る1月に日本公認会計士協会京滋会(以下「京滋会」)主催の講演会が京都市内でありました。
講師は千葉ロッテマリーンズ代表取締役の瀬戸山隆三氏。昨年パシフィック・リーグ3位からクライマックスシリーズを制し日本シリーズまで制して「史上最大の下剋上」で日本一になったロッテ球団の社長です。
京滋会の会員でかつてダイエーに勤務されていた方がおられてその方の縁で今回の講演が実現したとのことです。
というのも瀬戸山氏はロッテの前はダイエーホークス(当時→2004年にロッテに移られた)に在籍しておられたのだそうです。ダイエーは1999年と2003年に日本一になっているため昨年も含め4度日本一を経験しているという凄い人だったりします。
ちなみに2003年も2005年も日本シリーズの相手は阪神タイガースだったりします。特に2005年ロッテは阪神を4勝0敗のストレートで下しています。私にとっては2005年の滅法強いロッテの印象が非常に強く、それ以降別にファンでもないのですがロッテの動向は非常に気になるようになりました。
とはいうもののやはり関西といえば阪神ファンが圧倒的に多く(今回の講演は一般市民にも開放されていたのですが、そんな市民も何かにつけて「阪神がどーのこーの」と質問していました)、ロッテというといくら昨年日本一になっていると言ってもどうしてもインパクトが弱くならざるを得ません。そのためか参加者の数はいささか少なかったように感じました。ただ私は前述の理由もあって非常に期待していました。
公演の内容は期待通りの非常に興味深い内容でした。箇条書きで要点をまとめてみました。
・瀬戸山氏が経験した4回の日本一の内3回は(2010年も含めて)寅年。2005年は寅年ではないが「虎」に勝った、とのこと。
・2010年日本一を成し遂げた西村監督の前任であるバレンタイン監督には非常に苦い思い出ばかりだが”策士”であることは認めざるを得ない。(あれこれと愚痴話が続いた)
・ダイエー当時は球場と球団の売り上げは250億あった。しかし福岡ドームの土地と建物だけで2000億かかった。ちなみにマリンスタジアムのそれは約150億。
・ロッテに来た2003年当時で売り上げは20億、赤字は40億。
・こりゃいかん、という訳で当時の千葉市の市長(鶴岡啓一氏:2009年収賄の容疑で逮捕・辞職)を訪問した時のやり取り:
 鶴岡「ほう、ロッテが来るとは珍しいねえ」(地元ですらこんな有様)
 続けて鶴岡「でも周りはみんな巨人ファンばかりだよ」
 瀬戸山「セ・リーグは巨人でもパ・リーグはロッテですよ」
 鶴岡「いやあサッカーなら好きなんだけどねえ」
 という訳でロッテの話題を千葉の地元に浸透させることから始めないと、と瀬戸山氏の改革作業はそこから始まった。
・日本で展開するロッテグループの中で最悪の業績なのが千葉ロッテマリーンズ。2010年度は売り上げこそ2003年の4倍の80億円になったが相変わらず赤字20億。
・(これは講演では出てこなかった話だが私がメモしていた)日本の球団が何故赤字垂れ流しで経営が成り立っているのか。実は国税庁から「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」という法人税関係個別通達が出ている(http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/540810/01.htm)。見ればわかるように球団に対する親会社からの貸付金ですら損金(=税法上の経費)に落とせるのである。正に何でもあり。しかもこの昭和29年に出た通達(←これは「法律」ではないのだが)は今も生きている。
・ちなみに今日本のプロ野球チームで単体で黒字なのは巨人、阪神、そして広島。広島が黒字というのは意外かもしれないが理由は後述。ソフトバンクは観客動員数を見ている限り黒字のように思えるが実は今福岡ドームを所有しているシンガポールのファンドに使用料を年50億支払っていて全然儲かっていない。売上は大きいのかもしれないが。
・皆さんご存じのようにロッテは日本と韓国で事業を展開している(が日本からスタートしている)のだが、日本と韓国での規模は雲泥の差がある。日本ではグループの合計売上は約3000億円だが韓国では第5位の財閥で売り上げは約50兆ウォン(約4兆円)。
・韓国にもロッテは球団を持っている。その名も「ロッテジャイアンツ」(笑)ちなみに約9億円の赤字だとか。
・とにかく2003年のロッテは目を覆いたくなるような惨状。例えばダイエーの寮においては一人当たり4500~5000kcal/日の食事が出たのにロッテの寮においては1600kcal/日・・・。
・かつて横浜は巨人戦の放映権として1億円もらえた。だが今はその1/10の1000万円。しかし千葉テレビでのロッテ戦の放映権は何とたったの10万円・・・!あまりにもひどいので千葉テレビに抗議したのだがその反論:「お前歴史を勉強してから来い!昔はタダだったんだぞ」
・そんなロッテが変わり始めるきっかけとなったのが2004年の球界再編事件。これで千葉県知事も千葉市長も危機感を抱いた。行政側の規制でがんじがらめだった球場及び周辺施設の利用制限を解除して「ボールパーク化」を推し進めていった。これが功を奏する。
・2004年球界再編の黒幕は読売新聞主筆「ナベツネ」こと渡邉恒雄氏、オリックスの宮内義彦氏、西武の堤義明氏、そして竹中平蔵氏と当時のロッテ球団社長の濱本英輔氏(元国税庁長官)(→この最後の二人が加わっているということはあまり知られていないと思う)。Wikipediaにも掲載されているがこの時西武とロッテを合併するという話も出た(堤氏からの提案)のだがロッテの重光オーナーは「西武、いや堤とはやりたくない」と一蹴したというのが真相。
・瀬戸山氏曰く「ロッテは広島みたいにやりたい。広島同様選手は育ったら(他球団に)出す(→これが広島黒字の秘訣)。」選手会の力が強くなり年俸がべらぼうに高くなったし親会社からの援助も少なくなっている。それを考えると球団が自力で独立採算できる方向に動いていかないといけない。
ちなみに正にこの講演会が始まる直前にロッテの本社からFA権を取得していた小林宏之投手の阪神への移籍が正式に内定した、と瀬戸山氏の携帯に連絡が入りました。講演の直前におもむろに電話を取っておられたので何事か、と思ったのですが。まあ移籍後あまりパッとしませんが(苦笑)
・ロッテとしては選手が「2億以上くれ」というなら「出て行ってくれ」というスタンス→年俸の適正化を望む。そして最低年俸の引き上げを労組(=選手会)としては考えるべきでは?
・読売が日本のプロ野球を作ったようなもの(ちなみに朝日は高校野球、毎日が社会人野球)→今後は巨人べったりではだめ
・Jリーグでは赤字が3期続いたらJ2に降格になる。プロ野球でもそれくらいすべきでは?
・球界再編は今後再び勃発する可能性が高い→横浜がもうどうしようもない状況
・日本のプロ野球がジリ貧になれば将来韓国・台湾・中国でのアジアリーグもありかも知れない。
以上、ダラダラと書いてまとまりがなかったかもしれませんが、雰囲気は伝わったでしょうか。
会計士協会の地域会主催ということで数字に関する話が多くなったような気もしますが、これらの話を踏まえて今年のプロ野球を見てみるとまた面白いかもしれませんね。

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